「第2回京アニ&Do ファン感謝イベント」ステージイベント「京都アニメーション監督対談!」のレポート。実はセカイが参加できたステージイベントは山田尚子監督のサイン会とこの監督対談!のみだったり。
少し遅くなりましたが、いつも通りトークショーの様子を纏めてみました。非常に雑なメモからレポート起こしているので、微妙なニュアンスの違いや意味の捉え間違い、大幅な聞き漏らし等もあるかと思います。もし明らかな誤記がございましたらご指摘頂けると助かります。
第2回京アニ&Do ファン感謝イベント
山田尚子監督のサイン会に参加してきました
「第2回京アニ&Do ファン感謝イベント」展示レポートVol.1 山田尚子監督編
「第2回京アニ&Do ファン感謝イベント」展示レポートVol.2 「響け!ユーフォニアム」編(1)
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■京都アニメーション監督対談!
日時:2015年10月31日 10:30〜11:30
登壇者:石原立也(監督)、武本康弘(監督)、山田尚子(監督)、石立太一(監督)、MC:白石稔(声優)
※以下登壇者の敬称略
なお、当日の並びは左から白石稔(以下 白)、山田尚子(以下 山)、石立太一(以下 立)、武本康弘(以下 武)、石原立也(以下 石)の順でした。
白:ではまずどんな作品を監督されたのかを見てみましょう。
(前面スクリーンに各監督の代表作が表示される)
石原立也監督 代表作:
AIR、Kanon、CLANNAD -クラナド-、CLANNAD 〜AFTER STORY〜、涼宮ハルヒの憂鬱、涼宮ハルヒの消失、日常、中二病でも恋がしたい!、中二病でも恋がしたい!戀、響け! ユーフォニアム
山:(c)マークがすごくいっぱいありますね(笑)。
武本康弘監督 代表作:
フルメタル・パニック?ふもっふ、フルメタル・パニック! The Second Raid、らき☆すた、氷菓、甘城ブリリアントパーク
武:見事に角川一色ですね
石立太一監督 代表作:
境界の彼方、劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE-
立:こざっぱりしていいな
山田尚子監督 代表作:
けいおん!、けいおん!!、映画けいおん!、たまこまーけっと、たまこラブストーリー
山:ひらがな多いですね、優しい感じ
白:今回、事前にホームページで各監督への質問を募集していました。その中から幾つか各監督に伺っていきたいと思います。
質問1:原作がある作品を手掛けるにしても監督の色が出ると思います。監督のルーツ(影響を受けた作品)やどんな子どもだったのか、アニメ制作を志したきっかけを教えて下さい。
石:70年代くらいのアメリカ映画に影響を受けました。
白:京アニに入社されたきっかけは何だったんでしょうか?
石:70年代は宇宙戦艦ヤマトや機動戦士ガンダムなどのアニメブームで、アニメ雑誌も発刊されました。その中で製作者へのインタビューなどもあり、小学校高学年頃にそういう仕事があるんだと興味を持ちました。
中学生の時、進路を考えた時にアニメ制作の仕事を意識し始めました。
80年代アニメは勢いがあって見まくっていました。当時は「おたく」という言葉の使い方が今と若干違い「スペシャリスト」としての意味合いがありました。
当時はアニメを見るのも好きだけど創るのも好きで、オヤジを騙して8mmのカメラを買わせたりしてました。
武:影響を受けた作品は無いが、アニメを仕事にしたいというきっかけになったのは「天空の城ラピュタ」です。こんな面白い作品があるのか、自分も創ってみたいと思うようになった。
好きな作品は他にもあるけど、ラピュタ以外は優劣がつけにくい。
立:オーソドックスに映画「Back to the Future」に影響を受けました。
僕はもともとアニメ制作業に就く予定はなく実写畑に行きたかった。TVとか実写畑の就活をしていた時に、(実写は)自分に向いていないなと思い、もともと絵を描くのが好きだったというわけで、たまたま募集していた京アニに就職しました。
武:観た映画の本数は?
立:数えきれないです。
山:宇宙戦艦ヤマトは観てなくて、ラピュタかと言われたらナウシカ(の方が好き)です。「Back to the Future」はマーティがしている時計と同じモデルの進化版を購入しました。
先輩方の全部頂きました(笑)
※補足:山田尚子監督が購入されたのはコレかと思われます。
※補足:山田尚子監督が購入されたのはコレかと思われます。
参考:Marty Mcfly’s Watchを推理
京都で生まれてから母の実家の群馬で3年くらい過ごしました。電気も通っていないような、虫もいるし、小川もせせらいでいるし……トトロが好きです(笑)
トトロのようなところで育った後、京都に戻りました。
京都では実写のアニメーション、チェコのヤン・シュヴァンクマイエルの「アリス」を観てアニメを創りたいと思いました。
※好きなのに名前がどうしても出てこないとのことでお客さんに助けてもらってました。
武:それ、生涯観たアニメで1番怖かった。
山:好き過ぎてプラハにある彼のアトリエに行ったことがありますが開いていませんでした(笑)
近所の人に怪しまれて、叱られました(笑)
白:
質問2:どうして数あるアニメ制作会社の中から京アニに入社されたのでしょうか?
また京アニに入社して何が良かったですか?
石:専門学校時代、会社説明会での京アニの専務の話に魅力を感じました。
武:関西にあったからです。生活費が関東と関西では差があったので。
白:では石立さんは入社して良かったことは?
立:入社して良かったことは……、入社した理由はいいの?
山:実写が良かったのに(笑)
白:そこは拾わないの!
立:社長や専務の人柄をはじめ会社が朴訥で、ここだったら長く仕事できそうだと思いました、薄っぺらかな……。
山:大学の入試課でパラパラと(求人票)を見ていたらあったという感じです。良かったことは皆が真面目で優しくて朴訥で、人の心を何よりも大事にしている会社だと思いました。
白:
質問3:京アニ作品はクオリティが高いですがアニメの製作期間はどのくらいですか?
またやって良かったことや失敗談、お互いの作品創りでここがスゴイなと思っているところを教えて下さい。
石:製作期間はよそと変わらないと思いますよ。
武:最初の制作日程は他社さんと大差ないです。あとはスケジュール通りに進行するかどうかです。
白:京アニさんのアニメのクオリティは素晴らしいと思いますよ。
石:他社さんも素晴らしいと思いますよ。
関東は仕事場がバラバラだけど、京アニは社屋にスタッフが詰まっていて、思いついたらすぐ担当のところに行って打ち合わせが出来るのがメリットだと思います。
武:右(石原監督)に同じ
白:失敗談、こういうことがダメだなということはありますか?
石:真面目な話してもいい?
(同じ職場で働いているってこともあり)やや、なあなあになってる点があって、正しくこちらの意図が(スタッフに)理解されていないこともあります。
武:石原さんの言葉が足りないんじゃないのかな。自分はそんなことは無いです。
自分は京アニ1の打ち合わせ上手です(笑)
山:石原さんの監督される作品は齟齬がないです。まさに「石原印」という。
「ブルマを描いてくれと」(笑)
白:CLANNADでもそうとうブルマが。
山:次も確実にブルマが(笑)
石:高橋留美子さんがブルマを続けられる限りは僕も続けますよ(笑)
白:山田さん、他の監督からはどのような刺激を受けてますでしょうか?
山:初めて監督させてもらった時も石原さんに、初めて演出させて貰った時も石原さんに助けられているのに、(先ほどは)ブルマの話で申し訳ないです。
石原さんはキャラクターに対して「僕が好きになれるかどうか」と一貫しています。
石:飲食店の料理と同じで、僕が好きになれないキャラ(自分が食べて美味しくないもの)をお客さんに出せないです。
山:というのが石原さんで、石立さんは原画をさせて貰ってる時にハルヒの4話で白石稔が……、じゃなくて谷口が……(笑)
白:いきなり名前呼ばれてびっくりしました(笑)
山:石立さんはモノづくりが好きな方だと思います。色んなギミックを教えてくれて、創ってて凄く楽しくなりました。お仕事でご一緒する時は嬉しいです。
武本さんは理屈が通っていて、コンテ切る時の行間に無駄がなくて勉強になります、全体像が見えてる方です。全て武本さんの手の上だった。
白:
質問4:キャラクターの足の動きが魅力的ですがその理由は。
石:足は山田だろう。
白:足フェチですか?
山:語弊がありますが、(足は)緊張していたら足が動いていたりとか、感情表現にいいなと思います。
質問5:毎日の生活の中でどんな瞬間に作家として描きたい光景に出会い、それを演出に転換しますか?アニメータの先輩としてアドバイスをお願い致します。
白:普段、気にして見ていることとかありますか?
山:あります。自分が見ている世界には自分は居ないので、人と人とのコミュニケーションや人が動く際の動機、(一つ一つの何気ない動作でも)感情に動かされてるという点が気になります。「鼻かんだ」だけでも感激します。
立:人間観察をしています。
山田洋次監督の本に「自分がどう感じるか、それをどうアウトプットすれば伝わるか」とあり感激しました。日々自分が感じたことをどうすれば伝えることができるか、アンテナを張り続けています。
武:自分を作家と思ったことはないし監督になりたいと思ったこともないけど、関わらせて頂いた仕事を一所懸命やっていたら監督になった。何か描きたいという出会いがないと描けない。
白:今後やってみたい、描きたいものは何ですか?
武:この年になってようやくぼんやりわかってきて、男の子だけ出てきたらいいかなと(笑)
白:この後のステージ(「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」公開直前イベント)のことですよね(笑)
石:山田(尚子監督)と「響け!ユーフォニアム」をやった時、高校に取材に行かせて貰いましたがその際、(取材とは関係ない)女子高生の仕草が可愛くて参考になりました。
アニメータや監督になりたいと思っている人は電車の中でスマホとか見ない方がいいと思いますよ。毎日の瞬間の中に素敵な瞬間、光がキレイに当たるとか、わざわざ探さなくても良い風景、瞬間はありますよ。
白:これからどういうことをしたいですか?
石:やりたいことは沢山ありますが、残りの人生を考えると……自分は何十年でもやりたいが。……ここではパッと言えないが、そういうのができるといいな。
白:武本さんからも何かアドバイスがあれば。
武:右(石原監督)に同じで、観察眼はとても大事です。
創りたいものに出会うかどうかも大事ですか、自分がどういう人間かを見つめなおす、研ぎ澄ますことも大事だと思います。
ようやく自分に何が出来るか、自分の武器は何かがわかってきました。
自分の内側に矢印を向けて掘り下げていく。何かを創るにあたって、皆さんに対して自分が出せるものはコレだと見極め研ぎ澄ます、それが分かったらどう創っていくかも分かります。
可能性を閉じてしまう話ですが、何でも出来るGeneralistも素晴らしいですが自分には剣が一本しか無いことが分かったので、それを研ぎ澄ませていきたいです。
立:武本さんの話を少し否定してしまいますが、若い内は興味あることに何でもがむしゃらに取り組んだ方が良いと思います。その内、興味あること、楽しいことが分かっていきます。そうしていくと自分の武器が何なのか分かってきます。
若いころに結論付けるのは良くないと思いますよ。
山:自分は作品を創るにあたって信条がありましてママゴトを肯定的に見ることが大事です。(物事を)斜めに見るのではなく、愛を持って肯定的に見ていないと、作品を観る人が気持よくない、最終的には愛が大事です。
白:最後にひとことお願いします。
石:もうちょっと景気づけになればと思っていたけど楽しんで頂けたでしょうか。アニメータになりたい方は展示も見て頂いてモチベーションに繋げてもらえればと思います。
武:楽しんで頂けたらと思います。アニメータになりたい方ははやまるな!
立:本日はありがとうございます。一発目のステージなので荷が重かったです、楽しいステージもあるんで楽しんで下さい。
隣の展示スペースも空いていたんで直接アニメータの肉筆画を多くの方に観て貰いたいです。
山:京アニを代表しちゃった感じで発言に間違いなかったでしょうか。
京都以外から来られた方は、この時期の京都の紅葉は素敵ですのでそちらも楽しんで貰えたらと思います。