第20回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を『映画「聲の形」』が受賞しました。
これを記念してTOHOシネマズ新宿にて『映画「聲の形」』トーク付上映が行われました。
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日時:2017年9月18日15:50〜18:30
会場:TOHOシネマズ新宿[スクリーン11]
出演:山田尚子
モデレーター:高橋良輔
※敬称略
概要: 人と人とのコミュニケーションにおける伝えることの難しさやそれゆえの尊さなどを描き、本格的な手話表現と現代の若者の内面や、彼ら・彼女らが自分を受け入れていく姿を表現することについて作者から話を伺うトーク付き上映会。

上映/トーク「『映画「聲の形」』トーク付上映」/ Film screening and talk of “A Silent Voice”

 前回、山田尚子監督が「たまこラブストーリー」で新人賞を受賞された時と同様、モデレーターはボトムズでおなじみの高橋良輔氏。

 今までどおり、ほぼ自分のメモ用にですがトークショーの様子を纏めてみましたので、雰囲気だけでも味わってもらえたらと。
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関連記事:山田 尚子監督と高橋 良輔監督が「たまこラブストーリー」について語っているのを聴いてきました

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高橋:前回、というか前前年の「たま"ご"ラブストーリー」じゃない(笑)「たまこラブストーリー」でお話ししましたが、あれから1年間隔置きまして、またよろしくお願い致します。

またモデレーターって何だろと思い改めて意味を調べてみましたが、やっぱり司会や調整役と出ていました。

『映画「聲の形」』は大阪のシネコンで拝見しました。

山田:映画館で観てもらったんですか。ありがとうございます。

高橋:自分が関係したもの以外は普段、なかなか見ないのですが、「聲の形」はメディア芸術祭の(選考)会が始まる前に、審査とは関係無しに見せて頂きました。

内容がいじめなだけに、楽しくという感想は当たらないんですが、感心しながら見せて貰いました。制作にあたっては苦労されましたでしょうか。

山田:「聲の形」制作時の記憶がごっそりと抜けてしまっていまして、当時は苦労したんだろうなあと思います(笑)

私が携わった作品はTVシリーズから映画になるものが多いので、映画から入るもの、(制作の)1回目が(全ての)答えになるというのが初めてで凄くテンパっていました。(制作時の事は記憶が抜けていますが)いい思い出だったんだろうなと思います。

高橋:コミックスをアニメ化しようとする、そもそものきっかけは何でしょうか?

山田:京アニのプロデューサーさんが「聲の形」をアニメ化するという企画を持ってきまして、自分が監督させて貰えたらなと思っていました。

五感をフルに使って感じてもらう、五感をゆさぶる映像表現に相応しい作品だなと思いました。

高橋:(大学の)学生達は絵をつくるのは好きでやるが、それに音や音声をつけることを好んでやる人が居なかった。映像は、音と音声と効果音の3つを1つにして合わせると映像になります。これが僕らの世代の映像作品だと学生に薦めます。

山田:この作品は特性上、聴覚障害者や話を聴かないようにしている少年が主人公なので、(音として聞こえないが)目に見える音、振動として伝わる音を映画にのせたかった。

(映画館のような音の環境が)ちゃんとしているところで観て貰うと、音を感じて貰えるよう、映像に音をなじませてのせています。

高橋:(作品をつくる上で)「記号性」が有力な武器になると思っています。自分自身は実写で育ち、手塚治虫先生がアトムをはじめた翌年にこの世界に入った。自分達が(アニメを)つくるのと、(アニメを)観て育つのは大分違います。

最近のアニメを見ると、この絵のクオリティで(自分が監督として)つくらせることを考えると胸が痛くなりドキドキする。絵のクオリティが高い作品は(アニメをつくる立場としては)観に行きたくなくなります(笑)

(記号性の話として)、焦った気持ちを顔や背中に汗を少し描くだけで有効だが、人がつくった記号は使わないようにしていた。それこそ富野(由悠季)がつくった記号などは……。

なので「聲の形」のバッテンは思い切ったことをしたなと思いました。

山田:バッテンはもともと原作の表現であって、原作者さんからも使って下さいとの要望がありました。アニメの映像として成り立つとは思っていたが、バッテン以外の記号の違いを出せたなと思いました。

高橋:1番感じて欲しい部分と、そのための「てこ」になる部分があって、自分ではバッテンは使えこなせないと思ったが、うまく使っているなと思いました。成功しているなと思いました。

山田:(バッテンは)観ている人が冷めてしまう処理なので、調整が難しかった。映像としての説得力を考えました。(バッテンのない部分だけが)将也の司会では無いし、説得力を大事にしました。

高橋:1番のテーマのコミュニケーションですが、自分は鈍感な方でいじめ問題が深刻じゃない時代に育ちました。20歳くらい年下のお母さんと話すと(自分の感覚では)怒られます。

(自分が教えている)大学生にも聴覚障害の方はいるが、その方とどう接するか、大学生にもなると人間として成長しているから、僕が見ている限りではうまくいっていた。

聴覚障害よりはいじめの方をみていたんですが、若い人たちの心にああいうものがひっかかってくるのかなとも思いました。何か(作品をつくる上で元になった)経験はありますか?

山田:小中学校時は、視野が狭いので、無視をする・それに対して悩む等の実例は見てきました。
この作品でいうと「いじめ」は記号であるかなと思いました。

何を思ってこういった行動を取るのか、相手を見る目線がどうなったか、キャラクターの行動への肯定も否定もなく、フラットに見ていこうと思いました。心が動いたから、こういう行動になったんだなと紐解いていきながら、キャラクターの気持ちに寄り添い、耳を傾ける作業でした。

高橋:自分に1番近いキャラとかありますか?

山田:自分自身をあまり信用していないんですが、自分を作品のどこかに投影しようと思うと作品が描けなくなります。

高橋:自分は入り込むタイプなので、自分の経験以外は頼りにできないです。
「聲の形」には成熟した男性、成人男子が1人も居ないですね。

山田:お話しを聞いて思ったのですが、きっと主人公の将也にそのように(成熟した男性)なって欲しいと思って居なかったのではと思います。

そこに成熟した男性がいると物語が完結してしまい、答えになる人が居ない方が良いのかと思いました。

高橋:今は子供たちがみんな無理をしている気がします。
僕らの時代には、あまり社会が辛くなかった。

真剣に社会に向き合ったキャラを見ると辛くなります。進むべき道を自分で探させるよりも、ある程度強制された道を提示した上で、それに反発したり逸れていったりする方が楽な気がします。

山田:たまこをつくっていた時は、主人公の女の子の周りには大人がいたけど、聲の形には見本を見せたり、しかったりする大人がいない。ただ周りにある世界はキレイでありたい、個人個人の気づきを大事にする作品だったと思います。

高橋:京アニは日本アニメのここ20年くらいをリードしてきた部分がありますが、その中でも山田監督の作品は1作1作前へ、今までの足慣らしをしているだけじゃなく(前進していると)感じた。

今度はどんな作品をつくるのか、言える範囲でも。

山田:(来年)4月からシリーズからの作品、吹奏楽部の女の子の話(註:「響け!ユーフォニアム みぞれと希美の物語」)をつくります。

高橋:アニメは架空のモノを描いたら、多少間違ってても許されますが、現実にあるものをアニメで描くと間違えられない。尊敬しています。

山田:前回もお話ししましたが、京アニは真面目な集団なので信頼しています。でもアニメの嘘も大事だと思っていますよ、デフォルメとか。

高橋:実写だと真面目が押し付けがましくなりますが、アニメだとすんなり捉えてもらえる。すごい武器だと思います。
時間ですが、何か言い残したことがあれば。

山田:『映画「聲の形」』公開の1年と1日経ちました。ありがとうございます。本作品を映画館で観てもらえて嬉しいです。次作は4月になります。次も音を大事にする作品になります。またよろしくお願い致します。