第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を「たまこラブストーリー」が受賞し、2月からシネマート六本木で3回ほど上映されています。
 特に2月11日(水・祝)の上映では、審査委員であるボトムズの髙橋 良輔監督がモデレータとして山田尚子監督を迎えてのトークショー付き、何を置いても行くしかないと。

 今までどおり、ほぼ自分のメモ用にですがトークショーの様子を纏めてみましたので、雰囲気だけでも味わってもらえたらと。
 今回、全編にわたって山田尚子監督は大変緊張しており、時々、うまく回答できずに次の話に強制的に移ってもらったりしてます。 
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高橋:新人賞受賞おめでとうございます。

山田:ありがとうございます。

高橋:モデレータとして呼ばれたけど、何やって良いか分からず、司会じゃないし、何だろうと思って辞書引いてみましたよ。それは置いといて、皆さんも(山田尚子監督へ)聞きたいことがあるだろうけど、僕も沢山あります。

京アニって京都市にあるの?

山田:本社は京都府宇治市にありますが、一駅行った六地蔵にもスタジオがありまして、そこがギリギリ京都市にあります。

高橋:京アニは名前も作品も知っているが、場所がどの辺りにあるのかは知らなかったです。
僕の知っているところでは、実はアニメータの谷口(守泰)さんもどの辺出身かは知らないが京都出身です、織物の絵柄とかが出発点らしいですが。

高橋:たま「ご」ラ、あ……

山田:よく言われます(笑)

高橋:たまこラブストーリーですが、僕は常盤みどりちゃんが一番好きです。

山田:ありがとうございます。実は身近なスタッフにもみどりちゃんが好きって人が多いです。

高橋:ちょっとたまこちゃんは僕にとっては女の子っぽすぎる、僕はみどりちゃんが1番好きです。

山田:ありがとうございます。今日はよく寝られそうです(笑)。
今回は、高橋さんに総評をして頂き、先輩でもある石原立也が大変興奮してしまって、失礼のないようにしないと、石原立也を背負っています(笑)

高橋:今回の受賞作について語らなければならないのですが、今までの京アニの作品にも思い入れがあって、実は僕は関西の大学で教えているんだけど、その卒業生が「アヌシー(国際アニメーション映画祭)」に行って、とてもアニメーションの世界が広がったと。

 日本のアニメーションの広さ、「アヌシー(国際アニメーション映画祭)」に出品される作品もあれば、巨大ロボットもの等題材とテーマが大変広い。子供向けに、芸術的にと偏っていない。その象徴がたまこラブストーリー。

 (非日常的な舞台を作品と比べて)ハラハラ・ドキドキがあるわけでもない日常の中に、そういったものを見つけて、アニメに落としこむ。何もなかったはずの日常に、ハラハラ・ドキドキがある、日本のアニメーションはこういった作品が支えていると思う。

 こういった作品は考えて創ってるの、それとも自然となのかな?

山田:(ちょっと答えに窮す)

高橋:じゃあ、ちょっと質問を変えて、アニメを観る立場としては今までどんな作品が好きでしたか?

山田:今まではドラえもんやクレヨンしんちゃん、そしてスタジオジブリ作品などを観てきました。私はアニメーションという技術に感動して、虫プロの「哀しみのベラドンナ」に凄く衝撃を受けて。海外のアートな作品もありましたが、日本人が創った日本のアニメーションで、そんな作品があって凄く衝撃を受けました。

 日本のアニメの1コマを絵で描くということに……、うまくまとまらない、助けて下さい(笑)。

高橋:ちょっと自慢していいかな(笑)。日本のアニメをリードしてきたのは宮﨑駿のスタジオジブリですが、僕の育った虫プロは鉄腕アトムを創りました。アニメといっても止め絵に口パク、でもここから日本のアニメーションは始まりました。30分のアニメを毎週放映というスタイルはアトムから始まった。ただすぐにアトムは(人気的・技術的)追いぬかれます。

 手塚(治虫)先生はすぐに新しいものに挑戦して、それがさっき出た「哀しみのベラドンナ」です。

 日本のアニメはテーマやモチーフに垣根がなく、アトムは子供向けに見えて、実は手塚先生原作の(子供向けの)話は5年間放映した250本分の100本程度。残り150本はアニメオリジナルです。このオリジナルのストーリーは、今まで子供向けに作品を制作したことがない人たちです。だから子供向けじゃないところを多く含んでいた。当時、子供以外は観てくれませんでしたが。

 当時は、たまこラブストーリー(のような作品)は無かった。
当時どころか15年前もなかったかな。日本のアニメの広がりの到達点がたまこラブストーリー。

山田:京アニは、ただただ愚直にアニメを作り続けている集団です。
たしかに昔のアニメは(子供向けでも)大人っぽいですね。

高橋:表紙は子供向けだが内容は大人っぽい。
たまこラブストーリーで魅力的なのは足のカットが多い、足だけで(キャラクターの様子を)表現しているシーンも多い。それが僕達にはなかった。習っちゃおうかな。

山田:「目は口ほどに物を言う」じゃないですけど、足もそうだろうと思ってました。足って普段は机の下に隠れちゃいますので人の本性が出ちゃうと思います。

高橋:指や手もそうだが、足は今まで居なかった。
(たまこラブストーリーの)魅力としての何分の一かは足が担っているのでは。これから足は京都に任せておこう(笑)。
僕は耳ででも表現してみようかな。

山田:耳いいですね!

高橋:たまこが川に落ちるシーン、あそこを下った三条にあるホテル藤田が無くなっちゃいましたが定宿でした。近場に飲み屋さんがあった。ホテル藤田は映画関係者がよく泊まっていて、石原裕次郎や勝新太郎はスイートルームに泊まっていた。というわけであの川にも馴染みがあった。

山田:(飛び石を)渡ってみたりしましたか?

高橋:渡りました。

山田:あれ、結構幅広いですよね(笑)

高橋:映画だったら、あの画角は必要だよね、あのショットは使うよ。

山田:緊張が緊張を呼び、緊張しか無くなってしまいました。

高橋:出町柳の商店街についてだけど、模型屋さんがあるよね。

山田:(模型屋さんを聞き間違えて)木魚屋さん?

高橋:模型屋さんです(笑)。

山田:あー、商店街を右に出たところにあるガラス張りの。
(お客さんに対して)京都にいらっしゃることがあったらぜひ。

高橋:自分では今は模型は作らないが、プラモデルからダメになった。自分で木を切ってってのをしていたが、プラスティックになって素材的に苦手になっちゃったが、僕の家庭も支えているんで悪くは言えない(笑)
8日はワンフェスにも行って来て、マニアの陽気に当てられました。

山田:企業とアーティストの方どちらもいらっしゃるんですよね。素晴らしい物がいっぱいあって1回行ってみたい。

高橋:たまこラブストーリーに話を戻しましょう(笑)
たまこを生み出した京アニですが、実は以前、ある地方都市から「アニメーションが街に定着しませんか?」と相談を受けましたが結局うまくいきませんでした。京アニがヒットを出して切り込み隊長になり地方に飛び火すると良いですね。

山田:今では四国や富山にもスタジオがあるんで今後も増えるといいですね。

高橋:地方出身のライバルが増えていくといいですね。

山田:高橋さんはもともとアニメータ出身ですか?

高橋:自作では何でもしますが、アニメータは机に長時間座っていないといけないので自分にはダメでした。とりあえず素養があることだけは証明して、制作進行から演出となっていきました。アニメータは1年もやっていません。絵はもともとこの業界を目指すくらいなんで下手だけど好きです。ガンダムやボトムズは自分では描けないです(笑)
山田さんはアニメータ出身ですか?

山田:はい、動画や原画、演出すべてやりました。座るのが大好きです(笑)。

高橋:僕の教えている大学でも、アニメを習う人は70人、うちサボりを抜いて実質30人。この30人は人と話すのは苦手、でも絵が好き。そして面接で落っこちちゃう。本来ならこの人達を雇うべきですよ。15時間くらい平気で座ってますよ。

 何とかアニメータの入口を広くして、アニメータとして(先ずは)座ってるだけでも、その内他のことにも興味が出てきて世界が広がってくる。

山田:アニメータは大事です、やりがいがある仕事です。アニメーションを創りながら、その作品が出来上がるまでの過程をずっと見続けられる仕事です。

高橋:きっと飛行機を造る仕事も、製作過程が見られて楽しいと思うんですが、アニメーションは手の中に納まってる感があって良いですよね。

山田:みんなでつくっていくのが本当に分かりやすい。(言葉に詰まって)ちょっとスキップして貰って良いですか。

高橋:アニメーションは「何となく出来ちゃった」ってのが無い。失敗が愛おしい。

山田:失敗の反省がすぐに活かせるのもいいですね。

高橋:反省、自分は活かせたかな?

山田:アニメはやんちゃなこともできます。

高橋:アニメの方向、アニメ表現の世界を広げられたらと思っています。
今はオリジナルアニメが多いが5〜7年に1本しか作れないが、オリジナルをやるのは「こんなこともできますよ」てのを見せるため。

 ディズニーも研究に研究を重ねてると思いますが、いざ全世界に作品を売るということになるとある程度、(ディズニー作品に求められる)方向が決まってくる。

 日本のアニメは寛容なので、失敗しても、新たなことに挑戦できる、チャレンジ精神がエンジンになってくれれば。これからも頑張ってください。

山田:頑張ります。

高橋:僕も頑張ります。
来年はTVアニメもありますんで。

高橋:山田監督はライバルです。

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ここから質問コーナー

質問:みどりちゃんが大好きなんですが、映画の結末だとみどりちゃんがかわいそうと思っちゃいますが、山田監督は個人的にかわいそうに思われましたか?

高橋:みどりちゃんは、自分の気持ちがたまこを飛び越えてはいけないと、思っているように感じた。映画は後味が良かった。後味が良い映画は名作ですよ(笑)

山田:みどりちゃんを大事にしたかったのでああいう展開にしました。みどりちゃんは「思春期の微熱」。思春期にしか感じられないものを全て彼女に押し付けました。

質問:たまこの魅力として女の子同士の友情があると思います。前作「けいおん!」のHTTのつながりと比べると、たまこ達のつながりは艶かしさ、湿度の違いを感じますが、そこは意識して制作されたのでしょうか。

山田:HTT、久しぶりに聴けて嬉しい。
けいおん!は原作からドライだけど仲良くてお互いを信じあってて、ボケれば必ずツッコミがあるドリフ(のようなコント)を意識しました。

 たまこはもともと、違う角度でってことで堀口さんと相談してました。どちらも本当の友情です。(たまこは)ちょっと隙間があるようで、実はお互い深く繋がってて。

質問:たまこは商店街を舞台にして地域の共同体を描き出してますが、キャラクターを創るにあたって、そのキャラの背景全てを描かなければいけないという風に考えてられたんでしょうか。

山田:キャラクターを、ただ紙の上に描かれただけの存在にしたくなかったので、そのバックボーンはとても大事です。キャラクターの家族や友達、全てを描きたいです。例えば、このキャラクターは家族とはこういった話し方をするが、友達にはそれとは違った話し方をするという。そしてその子達を囲む大人(たまこでは商店街の人)、そういうものが大事と思っています。絶対に描きたいと思っています。

質問:他の作品に影響を受けたり、ライバルとして意識している作品やクリエイターやいらっしゃいますか。

山田:アニメータになる前は、単純にこの人の作画が好きって思うこともありましたが、いざ自分がアニメータや演出になった辺りから、商業作品・アートに拘らず、作品を外に出すことが出来る人は全て尊敬の対象になりました。すごいキレイ事言ってるように見えますが、作品を創りだすということは大変素晴らしいです。

高橋:創り手であることが幸せですか?

山田:幸せです。

高橋:僕もそういう風に考えている人と話せて幸せでした。